65 頚椎症性脊髄症

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頚椎は、18歳頃から、年齢とともに変化・変性していきます。

具体的には、椎間板の水分が少しずつ蒸散し、弾力を失って座布団の役割が果たせなくなり、椎骨同士が直接的に擦れ合って変形し、骨の配列の形が変化・変性してくるのです。

頚椎に年齢的な変化・変性が起こることを頚椎症、変形性頚椎症と呼ぶのですが、このことは、誰にでも、平等に起こることであり、変性自体は疾患ではありません。
ところが、変形性頚椎症の進行により、脊髄や神経根が圧迫され、痛み、痺れ、麻痺が出てくると、頚椎症性脊髄症あるいは頚椎症性神経根症という傷病名、疾患となります。。

この症状の発症箇所は、それぞれの神経根の支配領域によってある程度説明できます。

頚椎の中には、脊髄・中枢神経と神経根・末梢神経が通っています。
脳から脊髄が下行し頚椎の中に入り、神経根を介して手に神経が出て行きます。
あるいは、脊髄は頚椎を走行して、足の方へ下行していきます。

頚椎症性神経根症では、脊髄から外へ出てきた神経根という神経が圧迫されるために、手のしびれ、手の痛み、頚部~肩、腕、指先にかけての痺れや疼痛、そして、手の指が動かしにくいなどといった、上肢や手指の麻痺の症状が出てきます。
脊髄は圧迫されていないので、上肢の症状だけが出現します。

ところが、頚椎症性脊髄症では、脊髄が圧迫されるので、圧迫部位より下の手・足の症状、箸が持ちにくい、字が書きにくい、ボタンがはめにくいなど、手指の巧緻運動が困難となり、下肢が突っ張って歩きにくい、階段を降りるとき足が、がくがくする、上肢の筋萎縮、脱力、上下肢および体幹の痺れ、症状がさらに進行すると膀胱直腸障害も出現します。

 

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左受傷時のMRIでは、C4/5/6/7でヘルニアが脊髄を圧迫しています。

右術後のMRIでは、脊髄の流れが保たれています。

 

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右のMRIでは、片開き式椎弓形成術が実施されています。
ハイドロキシアパタイトのスペーサーにより、脊柱管が拡大されています。

頚椎症性神経根症では、ほとんどで保存療法が選択されています。

頚椎症性脊髄症では、オペが選択されます。
オペは、前方除圧固定術が一般的ですが、MRIで3カ所以上の広い範囲に脊髄の圧迫が認められるとき、脊柱管がやや狭まっているときは、後方からの椎弓形成術が行われています。

 

頚椎症性脊髄症における後遺障害のポイント

 

1)年齢変成か、事故が原因か?
変形性頚椎症は、一定の年齢に達すれば通常、誰にでも認められる特徴であって、疾患、つまり病気ではなく、年齢相応の変性は、素因減額の対象には、原則としてなりません。

事故前に症状がなく、通常の日常生活をしており、頚椎症で通院歴がなければ、事故後の症状は、事故受傷を契機として発症したと考え、主張していくことになります。

 

2)立証について
例えば、3椎以上の頚椎に、椎弓形成術を受けたものは、11級7号が認定されます。
脊髄症状に改善がなければ、神経系統の機能障害で9級10号、7級4号も期待されるのです。

これらが、因果関係を争われることを想定し、受傷2カ月以内に撮影されたMRIで頚椎の変性状況を検証し、年齢相応の変性が認められるか、さらにケースによっては、年齢相応の変性であるかどうか、鑑定を依頼して、鑑定書を添付することもあります。

 

3)素因減額について
頚椎の変性が大きく、疾患に相当する変形性頚椎症であると診断されたときには、素因減額の対象となりえます。
最高裁 S63-4-21判決
「素因減額とは、被害者に実際に生じた損害が、その事故によって通常発生するであろうと考えられる損害の程度と範囲を逸脱している場合に、その損害拡大が被害者自身の心因的要因や事故前からの基礎疾患に原因があると認められるときは、その拡大損害部分については被害者の自己負担とし、賠償の対象としないものとする。」

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。

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